はじめに

VMware Cloud on AWS は 2016 年に発表され、2017 年夏より稼働している VMware のクラウドサービスです。このサービスでは、VMware の Software Defined DataCenter (SDDC) ソフトウェアスタックが Amazon Web Services (AWS) で提供されます。ここでは VMware Cloud on AWS の概要について説明します。

VMware Cloud on AWS の概要 VMware Cloud on AWS の概要

VMware Cloud on AWS の特徴

VMware Cloud on AWS には、以下の特徴があります。

  • ベアメタル EC2 インスタンス上に 構築された VMware SDDC
  • VMware が販売、運用、サポートを提供
  • 柔軟なキャパシティと回復
  • ワークロードの容易な移動
  • オンプレミスと一貫性のある管理性
  • AWS データセンター内で提供
  • AWS のグローバル インフラによる提供

ベアメタル EC2 インスタンス上に 構築された VMware SDDC

仮想化マシンの EC2 インスタンス上に vSphere ESXi がインストールされるのではなく、AWS が持つベアメタル インスタンスに直接 vSphere ESXi がインストールされています。そしてその vSphere ESXi 上に vCenter Server、vSAN、NSX が構築され、オンプレミスと同等のソフトウェアスタックが AWS のデータセンター内で稼働しています。

UI 上では i3p.16xlarge と表示されますが、現在 AWS でも Preview 中の i3.metal と同等のハードウェアで動作します。

VMware が販売、運用、サポートを提供

VMware Cloud on AWS は VMware から販売されます。日本の場合、間接販売となるのでディストリビューター、あるいは、パートナーから購入することになります。AWS のマネージメント コンソールから作成、管理するサービスではないことをご注意下さい。

SDDC スタック以下の、パッチ適用や障害復旧などは VMware によって行われます。面倒なパッチ適用のための各種バージョン整合性の確認、パッチ適用の検証といった作業は必要なくなります。

サポートは VMware によって行われます。SDDC スタック以下は VMware が管理しているため、VMware のサポートが迅速に環境の問題を確認することができます。UI に統合されたチャットサポートでは、VMware のスタップが迅速にサポートしてくれます。

Managed Service Provider (MSP) から本サービスが提供される場合は、異なるモデルが適用されます。

柔軟なキャパシティと回復

AWS の膨大なハードウェア リソースを利用しているため、必要なときに必要なだけ vSphere ESXi ホストを増やすことができます。AWS 内のベアメタル インスタンスも他のサービスと同様に API で管理されているため、UI あるいは API により vSphere ESXi ホストの追加の要求から 10 分程度で、新しいベアメタル インスタンスがリソースとして利用できるようになります。また、不要になればホストを削除して AWS にベアメタル インスタンスを戻すことができます。これによって、オンプレミスで資産として扱っている環境や固定期間のリースとして利用している環境よりも、柔軟な利用形態をとることができます。

AWS の膨大なハードウェア リソースと API で管理されたベアメタル インスタンスにより、ホスト障害の対応も大きく変わってきます。障害が発生した vSphere ESXi ホストの替わりに、別の新しいベアメタル インスタンスを使って新しい vSphere ESXi ホストを追加、そして障害が発生した vSphere ESXi ホストはベアメタル インスタンス毎 AWS へ戻されます。つまり、ホスト障害時は故障したホストを修復するのではなく、新しいホストを用意することによって対応がなされます。

ワークロードの容易な移動

オンプレミスと同様のハイパーバイザーが動作しているため、仮想マシンをオンプレミスから VMware Cloud on AWS に移動させる場合、簡単に移行させることができます。vSphere の仮想マシンから EC2 インスタンスに移行するときに必要な、仮想ディスクの変換作業、IP アドレスの変更は必要ありません。また、VMware を VMware たらしめる機能である vMotion も、オンプレミスと VMware Cloud on AWS の間で利用できます。オンプレミスから AWS のデータセンターへ vMotion する様は、どインフラなエンジニアにとっても vMotion 登場時の衝撃に匹敵します。また、重要なこととして VMware Cloud on AWS からオンプレミスへの逆方向の移行もサポートされています。

 

オンプレミスと一貫性のある管理性

オンプレミスと同様のハイパーバイザーが動作しているため、VMware Cloud on AWS を使い慣れた vCenter Server の UI で管理することができます。これにより AWS 内で VMware Cloud on AWS が動作していても、新しい AWS Management Console を学習することなく新しい環境を管理することができます。

VMware Cloud on AWS と合わせてリリースされた Hybrid Linked Mode は、オンプレミスの vCenter Server と VMware Cloud on AWS の vCenter Server を一つの画面で管理することを可能にした新しい機能です。これにより、一つのブラウザ画面で 2 つの環境を管理でき、この UI 上でオンプレミスから VMware Cloud on AWS への vMotion などを行うことも可能になります。

AWS データセンター内で提供

VMware Cloud on AWS は AWS のデータセンター内で提供されます。AWS とは別のデータセンター事業者の AWS の近くにあるコロケーションではなく、AWS のデータセンターの内部に展開されます。これにより、AWS が提供する S3 や RedShift といった AWS 自身が元々提供しているサービスに、広帯域、低遅延でアクセスすることができます。そして何よりも重要なのは、AWS のデータセンター内で VMware Cloud on AWS が動作しているので、S3 や RedShift からの通信は Egress Traffic ではないことです。つまり VMware Cloud on AWS の仮想マシンから AWS のサービスを使っても Egress Traffic の課金は発生しません。

AWS のグローバル インフラによる提供

VMware Cloud on AWS は AWS のインフラ上に構築されています。つまり、準備さえ整えば AWS の各リージョンで VMware Cloud on AWS を提供することができます。現在 (2018/05/06 現在) は、米国西海岸 (Oregon)、米国東海岸 (N.Virginia)、英国 (London) VMware Cloud on AWS で利用可能になっています。今後、ドイツ (Frankfurt)、米国西海岸 (GovCloud)、オーストラリア (Sydney)、日本 (Tokyo)、その他の地域、と順次 各地域のリージョンで利用可能になる予定です。